1.慢性閉塞性肺疾患(COPD)の気流制限に対する呼吸リハビリテションの効果の解析:従来の肺機能検査にNEP[Negative Expiratory Pressure]法による評価を加えた包括的呼吸リハビリテーションプログラムを立ち上げ、中等症〜重症のCOPD17例(69±5歳、FEV1.0 1.02±0.36L)に施行した。全例禁煙例で、抗コリン薬を中心とした薬物療法を受けていたが、プログラムにより呼吸困難感、運動能力、QOLが改善した。呼吸生理学的解析では、従来法による気流制限の評価ではFEV1.0:1.02±0.36から1.00±0.36Lと改善を認めなかったが、NEP法により安静換気時の気流制限が有意に改善していることが初めて明らかにされた。(気流制限のScore:2.2±1.6から1.1±1.5に減少、ISV(Isoflow volume[気流制限のため安静換気に重なるNEPループの範囲]):座位:20.5±28.4から11.6±21.7%に減少、(2/6例でISV消失)、ISV仰臥位:48.5±34.5から23.1±30.0%に減少、(6/12例でISV消失))。N2洗い出し法(標準法)による肺気量分画も前後で変化しなかったが、今回評価に加えたbody plethysmography法により、TGV、RV/TLCの有意な減少の知見が得られた。夜間低酸素血症を認めた1例で、NEP法による仰臥位での気流制限の改善とともに夜間の低酸素血症が軽快する新しい知見を得た。また、呼吸リハビリテーションとステロイドを含む薬物療法を最大限に行う入院プログラムを重症のCOPD9例(68±5歳、FEV1.0 0.78±0.19L)で施行、薬物療法の効果もありFEV1.0は0.99±0.26Lへと約200mL改善、NEP法による気流制限のScoreは2.8±1.6から1.3±1.8に減少(P<0.01)した。 2.気管支喘息急性増悪における検討:急性発作を来した19例で検討した。座位に比して仰臥位で呼吸困難感が増強、NEP法により仰臥位で気流制限が増強している知見が明らかになった。また、座位での呼吸困難感とNEP法による50%VT ratio(50%一回換気量位におけるNEPと安静換気ループの比)に有意な相関関係を認め、気流制限が気管支喘息の呼吸困難感に大きく関与する新しい知見が得られた。一方、仰臥位でISVを認める症例では、2週間以内に再発作を来す可能性が50%以上となることが明らかになった。
|