本年度は、肺小細胞癌の標的癌抗原であるHuD抗原をアデノウイルスベクターで樹状細胞に発現させることで、HuD抗原発現腫瘍に対する抗腫瘍効果を惹起しうるかを基礎的に検討した。 1.樹状細胞は、BALBcマウス脾臓を切片化して作成した細胞浮遊液をStemCell Technologies社のマウス細胞ネガティブセレクション磁気分離システムした脾臓由来の成熟樹状細胞を分離した。樹状細胞はFACSを用いてCD11c陽性、I-A陽性、F4/80陽性を指標に同定した。 2.単球細胞株および樹状細胞へのアデノウイルスベクターを用いたHuD抗原の発現誘導(パルス)を行った。単球細胞株THP-1はPMA(終濃度40ng/ml)で刺激し、付着細胞化する。オーバーナイト培養で40%の細胞が付着することを予め確認し、予想される付着細胞数に見合うHuD抗原発現アデノウイルスベクターを50MOIとなるように加え、3日後の細胞を回収し細胞を可溶化後Western blottingでHuD抗原の発現を確認したが蛋白の発現が確認できなかった。樹状細胞でもアデノウイルスベクターを投与したがHuD抗原の発現を確認できなかった。 3.細胞障害性T細胞とNK細胞より分泌される細胞障害性蛋白であるGranulysin発現アデノウイルスベクターを作成し、HuD抗原発現肺小細胞癌モデル細胞(Colon26/HuD)にGranulysinを発現させたところ、親細胞であるColon26細胞よりもapoptosisの出現、細胞増殖の抑制など有意に増加したことから、HuD抗原の発現が、免疫細胞由来の細胞障害性物質、さらには細胞性免疫への感受性を高めていると考えられた。
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