これまでの臨床的研究およびDNAワクチンによる基礎的検討から肺小細胞癌が発現するHuD抗原が抗腫瘍免疫の標的蛋白と考えられる。我々は、このHuD抗原を樹状細胞にアデノウイルスベクターを用いてパルスすることによって免疫提示させ抗腫瘍細胞性免疫を惹起できないか平成12年度から2年間かけて検討した。樹状細胞は、BALBcマウス脾臓を切片化して作成した細胞浮遊液をStem Cell Technologies社のマウス細胞ネガティブセレクション磁気分離システムした脾臓由来の成熟樹状細胞を分離し、FACSを用いてCD11c陽性、I-A陽性、F4/80陽性細胞を樹状細胞とした。単球細胞株(THP-1、PMA刺激によって付着細胞として用いた)および分離樹状細胞にアデノウイルスベクターを用いたHuD抗原の発現誘導(パルス)を行った。HuD抗原発現アデノウイルスベークターを最大50MOlまで増やしたがHuD抗原の発現をウエスタンブロットで確認できなかった。そこで細胞障害性T細胞とNK細胞より分泌される細胞障害性蛋白であるGranulysin発現アデノウイルスベクターを作成し、HuD抗原発現肺小細胞癌モデル細胞(Colon26/HuD)にGranulysinを発現させたところ、親細胞であるColon26細胞よりもapoptosisの出現、細胞増殖の抑制が有意に増加した。このことからHuD抗原の発現が、免疫細胞由来の細胞障害性物質、さらには細胞性免疫への感受性を高めていると考えられた。今回作成したアデノウイルスベクターの発現効率が予想外に悪かった。ウイルスの作成時にも濃縮率が悪く、293細胞の世代など見直しが迫られた。しかし、granulysinの実験から改めてHuD抗原が肺小細胞癌の抗腫瘍免疫の重要な標的蛋白であることが確認された。今後もリコンビナントHuD抗原蛋白を用いた樹状細胞パルスを検討する必要があると考えられた。
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