慢性間欠的低酸素高炭酸ガス曝露が繰り返される動物実験モデルでは、永続的高血圧、多血症を生じないが、期間に依存する曝露時一過性の血圧上昇、脈拍低下、[Hb]上昇が生じることが判明した。また期間に依存する右室肥大を示すことから、Hypoxic pulmonary vasoconstrictionも加わり、右心系に対する著しい負荷となることも明らかとなった。本年度は、この一過性の血圧上昇と脈拍低下の発生機序を、各種薬剤にて検討した。また、無呼吸がvascular eventsのリスクとなる点に着目、曝露時の血小板凝集能の変化を検討した。 32匹の雄S-Dラットを対照群、3週、4週、5週曝露群の計4群(各8匹)に分け、チャンバーにCO_2+N_2ガスと、圧縮空気とを交互に流入させ、1分でFlo_2 7%、Flco_2 8%、3分で室内気に戻る系を用い(1サイクル4分)、1日6時間の曝露を行なった。対照群は圧縮空気のみとした。間歇曝露後、麻酔下でカテーテル類を挿入、完全覚醒後に同じサイクルで室内気-低酸素・高炭酸ガス-室内気の吸入を行い、血圧、脈拍、動脈血ガス、[Hb]の変化を測定した。次に、α-adrenoreceptor antagonistであるPhentolamine、あるいはMuscarinic cholinergic antagonistであるAtropineをIVし、同様の測定を繰り返した。Antagonistsの投与により、一過牲の血圧上昇は減弱、脈拍低下は消失した。以上より、一過性の血圧上昇は交感神経を、一過性の脈拍低下は副交感神経を介する反応であることが解析できた。さらに。以上の各群でCD62P、PAC-1など血小板活性化マーカーを測定したが、今回の実験系では血液凝固系に明らかな変動を来たすほどの凝集能の変化は生じていなかった。
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