肺癌細胞株11-18より作製したcDNAライブラリーよりHLA-A2402拘束性CTL株GK一CTLを用いてgene expression cloning法によりHLA-A24拘束性肺腺癌拒絶抗原遺伝子のクローニングを行い、7個の遺伝子クローンを得た。これらのクローンについてHLA-A2402拘束性が確認されたので、全塩基配列を決定した。その結果、3個は既知の遺伝子であり、4個は新規遺伝子であった。さらに、Northern blottingによりメッセージサイズを決定した。これら7個の遺伝子のうちの一つ、クローン5について詳細な検討を行った。クローン5は種々の抗癌剤に対する多剤耐性(MDR)に関連したタンパクであるmultidrug resistance associated protein 3(MRP3)をコードする遺伝子であった。次にHLA-A24拘束性CTLにより認識されるMRP3由来癌抗原ペプチドの同定を行った。HLA-A24結合性ペプチドのモチーフはすでに決定されているので、HLA-A24結合モチーフを有する9ないし10アミノ酸からなるペプチド31個を選別し、これらの合成ペプチドをHLA-A2402安定形質転換細胞株C1R-A2402にパルスし、GK-CTLとの反応性をIFN-γ産生で検討した。その結果4個の癌拒絶抗原ペプチドを同定した。さらに、これらのMRP3由来ペプチドによるHLA-A24陽性の健常人もしくは癌患者末梢血リンパ球からのペプチド特異的CTLの誘導を試みた。その結果、肺癌1例、腎細胞癌3例、大腸癌2例および健常人1例の末梢血からHLA-A24拘束性ペプチド特異的CTLが誘導され、細胞傷害活性も確認された。MRP3の各種癌細胞におけるmRNA発現を調べたところ、肺癌細胞株全例(n=10)に発現が認められた。
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