神経および筋細胞変性の機序に於ける酸化的ストレスの関与:特にヘム異化系の役割を中心に

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12670588
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 武田 篤 東北大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70261534)
• 研究分担者: 竪山 真規 東北大学, 医学部・附属病院, 医員
• キーワード: heme oxygenase / Parkinson disease / Alzheimer disease / bilirubin / biopyrrin / alpha-synuclein / oxidative stress / neurodegeneration

研究概要

本年度は核酸酸化物の病態での役割に注目して研究を進めた。特にRNA由来核酸酸化物である80HG(8 Hydroxy guanosine)は神経変性疾患脳内で、病初期より広範な神経細胞中に発現増大することが我々のグループの仕事により明らかにされて来たが、それらは例えばアルツハイマー病では、神経原繊維変化や老人班出現、あるいはリン酸化タウの増大などよりも早期から認められる変化であり、病態カスケードの極めて上流に位置することを明らかにした。同様の変化はパーキンソン病でも認められ、神経変性疾患に共通して認められる変化と考えられる。脳内のみならず患者血清中や髄液中での増大も確認され、これらは変性疾患の診断にも有用である可能性が示唆された。一方ミオパチーでの筋細胞内80HGの検討を進めた結果、やはり広範な病態で発現増大することが明らかとなり、それらは例えばRV-myopathyではamyloid-beta蛋白の沈着に先駆するととが示唆された。以上から、細胞内80HG増大は、細胞変性の良いマーカーとして神経筋疾患の病態の理解と診断に有用であることが明らかとなった。今後さらに鋭敏な定量系の確立により神経筋疾患の実際の診断上の有用性を検討していく予定である。
また我々は、現在、パーキンソン病の細胞モデルとしてapha-synuclein過剰発現細胞を確立し、種々のストレス侵襲下の病的蛋白凝集機序を検討しているが、この系を用いて、これらの核酸酸化物の細胞変性過程での役割、さらには細胞内での酸化的ストレス防御系であるヘム異化系との関連についても検討を加えてつつある。

研究成果

• [文献書誌] Kimura M., et al.: "No evidence of association between a dopamine transporter gene polymorphism(1215A/G)and Parkinson's disease"Annals of Neurology. 49. 276-277 (2001)
• [文献書誌] Takeda A., et al.: "Dementia in Parkinson's disease : its incidence and a possible relationship with Dopa-refractory symptoms"Psychogeriatrics. 1. 119-122 (2001)
• [文献書誌] Nunomura A., et al.: "Oxidative damage is the earliest event in Alzheimer disease"Journal of Neuropathology and Experimental Neurology. 60. 759-767 (2001)
• [文献書誌] Kikuchi A., et al.: "Hypoperfusion in the supplementary motor area, dorsolateral prefrontal cortex and insular cortex in Parkinson's disease"Journal of Neurologial Science. 193. 29-36 (2001)
• [文献書誌] Zhu X., et al.: "Activation of MKK6, an upstream activator of p38, in Alzheimer's disease"Journal of Neurochemistry. 79. 311-318 (2001)
• [文献書誌] Kikuchi A., et al.: "Systemic increase of oxidative nucleic acid damage in Parkinson's disease and multiple system atrophy"Neurobilogy of Disease. (In press). (2002)