研究概要 |
脳卒中様発作を主張とするミトコンドリア脳筋症のひとつであるMELAS症候群(ミトコンドリア遺伝子[mtDNA]の塩基番号3243位のアデニンからグアニンへの点突然変異)の病因mtDNAを導入した血管内皮細胞培養系を構築するため以下を行った. 1.mtDNA欠損株の構築のための条件設定 ヒト脳細動脈内皮細胞の初代培養株(BME;大日本製薬)を様々な濃度(10ng/ml〜200ng/ml)のエチジウムブロミド(EtBr)を培地に添加し,最も高率にmtDNAを選択的に消失し,生存も可能である条件を検討した.mtDNA断片をプローブとして(核ribosomal DNA遺伝子を内部標準),サザンブロットを行った結果,50ng/ml濃度が最も適切であることが判明した.この条件下で,mtDNAの量はEtBr添加前の値に比べ,60.5%(3日), 31.3%(6日), 5.6%(9日)で約2週間でほぼ検出感度以下まで減少することが明らかとなった. 2.MELAS患者由来の血小板mtDNAの血管内皮細胞への導入 福井医科大学附属病院へ通院する3名のMELAS患者から,同意を得た上で採血し,パーコール法で血小板(mtDNAのみを有する)を単離し,ヒト脳細動脈内皮細胞の初代培養株BMEへ細胞融合法によって導入した.この段階での融合細胞には,患者由来の変異型mtDNAと野生型mtDNAが混在するため,Kingらの方法(Methods Enzymol. Vol.264)にのっとり,(1)の条件で融合細胞をEtBr処理することでmtDNAの量を極端に減少させ,その後,EtBrを取り除くことで,効率良く,短時間で変異型もしくは野生型mtDNAのみを有する細胞株を得ることができた. 本年度は,これらの細胞株を用いて,好気的エネルギー代謝(酸素消費量,ATP量)と血管透過性を検討する.
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