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2002 年度 実績報告書

遺伝性セルロプラスミン欠損症の発病機序および病態生理に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 12670599
研究機関信州大学

研究代表者

吉田 邦広  信州大学, 医学部附属病院・遺伝子診療部, 助教授 (90242693)

研究分担者 武田 伸一  国立精神神経センター, 神経研究所・遺伝子疾患治療研究部, 部長 (90171644)
キーワードセルロプラスミン / 遺伝子改変マウス / 鉄代謝 / 酸化的ストレス / 星状膠細胞
研究概要

遺伝性セルロプラスミン欠損症の発症機序および病態生理を明らかにするため以下の検討を行った。
(1)遺伝性セルロプラスミン欠損症患者5例の剖検脳を集積し、病理・免疫組織化学的に検討した。5例に共通して鉄の過剰沈着および神経細胞脱落の程度は大脳皮質に比して大脳基底核に強く見られた。また星状膠細胞(アストロサイト)の変形およびspheroid-like globular structureの出現が本症に特徴的に見られる変化であることを指摘した。大脳皮質、大脳基底核のいずれにおいても鉄の沈着は神経細胞より星状膠細胞に強く見られた。globular structureはグリアのマーカーであるglial fibrillary acidic protein (GFAP)に対する抗体や抗S100蛋白抗体にて種々の程度に染色される一方、神経細胞成分であるneurofilamentやsynaptophysinに対する抗体では明らかな染色性が確認できなかった。またglobular structureの電子顕微鏡的観察にてグリア細線維様構造物が見られた。以上からこの構造物はグリア由来であることが強く示唆された。さらに酸化的ストレスのマーカーである脂質過酸化物4-hydroxynonenal(4:-HNE)に対する抗体を用いた免疫染色では変形した星状膠細胞、globular structureはいずれも強く染色され、これらの病理変化が酸化的ストレスと密接に関連することが考えられた。すなわち本症脳では鉄の過剰沈着に伴う酸化的ストレスの亢進によりアストロサイトの機能障害が生じていることが推察される。このことは神経細胞死の一因としてグリアの機能障害が関与する可能性を示唆するものである。
(2)セルロプラスミン欠損マウスにおける鉄代謝を鉄代謝関連遺伝子の発現という観点から検討した。本マウスはヒトの病態と類似して肝臓における過剰な鉄沈着と鉄欠乏性貧血を呈する。今回は鉄の主たる吸収部位である小腸と鉄が過剰に沈着する肝臓においてdivalent metal transporter 1(DMT1)、ferroportin 1(FPN1)、hephaestin (HEPH)、transferrin receptor 1(TFR1)および2(TFR2)の発現をTaqMan PCR法により定量的に検討した。その結果、セルロプラスミン欠損マウスの小腸ではヘモクロマトーシスや鉄欠乏性貧血で見られるようなDMT1、FPN1の過剰発現は認めなかった。また肝臓ではDMT1、TFR1が対照マウスに比べ有意に低下しており、TFR2も低下傾向を示した。以上より本症における肝臓への鉄沈着の機序としては小腸からの鉄の過剰吸収や肝細胞での過剰な鉄の取り込みが主因ではないことが推察された。このことは従来から指摘されているようにセルロプラスミンが肝細胞からの鉄の排泄に関与することを支持するものである。

  • 研究成果

    (5件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (5件)

  • [文献書誌] Kaneko K, Nakamura A, Yoshida K, Kametani F, Higuchi K, Ikeda S: "Glial fibrillary acidic protein is greatly modified by oxidative stress in aceruloplasminemia brain"Free Radical Research. 36. 303-306 (2002)

  • [文献書誌] Loreal O, Turlin B, Pigeon C, Moisan A, Ropert M, Morice P, Gandon Y, Jouanolle A-M, Verin M, Hider RC, Yohida K, Brissot P: "Aceruloplasminemia : new clinical, pathological and therapeutic insights"Journal of Hepatology. 36. 851-856 (2002)

  • [文献書誌] Kaneko K, Yoshida K, Arima K, Ohara S, Miyajima H, Kato T, Ohta M, Ikeda S: "Astrocytic deformity and globular structures are characteristic of the brains of patients with aceruloplasminemia"Journal of Neuropathology and Experimental Neurology. 61. 1069-1077 (2002)

  • [文献書誌] Yamamoto K, Yoshida K, Miyagoe Y, Ishikawa A, Hanaoka K, Nomoto S, Kaneko K, Ikeda S, Takeda S: "Quantitative evaluation of expression of iron-metabolism genes in ceruloplasmin-deficient mice"Biochimica et Biophysica Acta. 1588. 195-202 (2002)

  • [文献書誌] 吉田邦広: "無セルロプラスミン血症"神経研究の進歩. 46. 859-867 (2002)

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公開日: 2004-04-07   更新日: 2016-04-21  

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