研究課題/領域番号 |
12670600
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
宮嶋 裕明 浜松医科大学, 医学部, 助教授 (90221613)
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研究分担者 |
高橋 良知 浜松医科大学, 医学部・附属病院, 助手 (90303560)
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キーワード | セルロプラスミン / ミスセンス変異 / 脂質過酸化 / ミトコンドリア / エネルギー産生系 / 遺伝子発現 / 小胞体 / タエロオキシダーゼ |
研究概要 |
無セルロプラスミン血症は、血清のセルロプラスミンの欠損と、脳・肝・膵をはじめとする全身の諸臓器への鉄の沈着を来し、神経症状、網膜変性、糖尿病を呈する常染色体劣性遺伝の鉄代謝異常症で、我々が1987年に世界で初めて一家系を報告した。我々の症例を含め現在までに国内15家系、海外6家系が報告されている。既に18の遺伝子異常が同定されているが、ほとんどはTruncation mutationである。また、症状発現には沈着した鉄がフリーラジカルを介して脂質過酸化亢進を起こし細胞傷害を来すことが関与すると予想され、我々はこれまでに血漿、脳脊髄液での脂質過酸化の亢進を報告してきた。 1.今回は、静岡で発見された一家系について遺伝子異常を検討した。臨床的には、神経症状、網膜変性、糖尿病を認め、脳をはじめ組織への鉄蓄積も認められており、従来報告されている無セルロプラスミン血症の臨床像と一致していた。遺伝子異常はnt587C→G(Pro1778Arg)のミスセンス突然変異が同定された。実際にこの変異があるcDNAを、チャイニーズ・ハムスターの卵巣細胞を用いた発現系で発現させると、変異蛋白は小胞体にとどまり、ゴルジ装置への移動が起こらないことが分かった。従って、このミスセンス変異による無セルロプラスミン血症は、セルロプラスミンの生合成段階における細胞内小器官での移動障害に起因することが分かった。 2.セルロプラスミンはそのフェロオキシダーゼ活性により血漿の強力な抗脂質過酸化作用を有しており、鉄やフェリチンは脂質過酸化を促進することがわかっている。実際に、剖検脳での過酸化脂質は増加しており、脳神経細胞傷害を起こす一因となっている可能性がある。過酸化脂質については、4-ヒドロキシノネナールの測定系とコレステロールの脂質過酸化代謝物の測定系について検討したところ、ともに著明な脂質過酸化の亢進を認めた。また、PETを用いて脳の酸素代謝と糖代謝をみてみると、脳全体に明らかな酸素代謝と糖代謝の低下が認められ、特に基底核部位に一致して障害されていた。これは、脂質過酸化だけでなく、ミトコンドリアのエネルギー産生系の障害が存在することを示唆していた。
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