研究概要 |
H13年度は効率的な増殖法を探索的に検討した.胎性中脳由来のドパミン神経幹細胞と線条体由来の神経幹細胞を比較検討した.5%以上の仔牛血清にてprimingを行うと初期には効率的な増殖が得られるが同時に幹細胞の分化も促進され最終的な増殖効率は低下した.次に,2%血清(SP群),神経幹細胞条件培地(CM群),及び無血清新鮮培地(DMEM/F12+bFGF)のみ(SF群)の異なるpriming条件群で3週毎に2回継代した.継代毎に3条件に分けて計18条件(初代はSP群,SF群の2条件)について,胎性中脳由来ドパミン神経幹細胞,線条体由来神経幹細胞について比較検討した.いずれの条件でもbFGF離脱後5日で80%以上の細胞がMAP2陽性の神経細胞となった.細胞の増殖率は線条体由来神経幹細胞ではSP/SP/SP条件で1800倍に増殖し,SF/SF/SF条件では81倍に増殖した.他の条件はこれらの中間の増殖率であった.一方,中脳由来神経幹細胞では,SP/SP/SP条件で28倍に増殖し,SF/SF/SF条件では960倍に増殖した.CM群は継代直後は良好な増殖を示したが1週後にはSF群と同程度の増殖率となった.神経幹細胞は由来組織により血清の効果が異なり,中脳では無血清の方が34倍効率的に増殖し,逆に線条体では2%血清primingが無血清より22倍効率の上昇が得られた.各培養条件において増殖した神経幹細胞のmRNAを回収しRT-PCR法により比較検討を行っている. また,1-methyl-4-phenylpyridinium(MPP^+)は分化したドパミン神経に選択的な毒性を示すが,MPP+による神経細胞死がアポトーシスであること,proapoptotic proteinとして注目されているGAPDHの過剰発現と核内移行についても検討を行った.MPP^+曝露後,抗GAPDH抗体及びPI核染色にてアポトーシス惹起細胞におけるGAPDH過剰発現を認め,アポトーシス誘導されたドパミン神経(TH^+)の核内にGAPDH蓄積像が観察された.GAPDHに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドにより,MPP^+誘発性アポトーシスを抑制できることを確認した.パーキンソン病におけるドパミン神経細胞死はGAPDH過剰発現と核内移行を抑制する分子により治療しうる可能性が示唆された(Fukuhara, Takeshima et al.Neuroreport.2001)
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