研究概要 |
グルココルチコイド服用患者におけるミトコンドリア機能:60例のグルココルチコイド服用患者でエルゴメーター運動負荷試験を行い,運動負荷中の血中乳酸値を測定したところ疾患対照56例,正常対照16例に比較し著明な高値をとった(p<0.001).また血清乳酸値レベルと服用グルココルチコイド総量は有意に相関した(r=0.618,p<0.0001).さらに25例の患者ではグルココルチコイド服用後,運動負荷時の血中乳酸値と筋症状(disability score)は有意に増加していた(ともにp<0.001). ステロイド筋症患者の骨格筋組織における活性酸素の影響:既に筋生検を行っているステロイド筋症患者14例の骨格筋組織において,活性酸素の障害の指標として8-hydroxy-deoxyguanosine(8-OH-dG)をHPLC法によりミトコンドリアDNAにおいて測定した.ミトコンドリアDNA中の8-OH-dG/dGは上記14例では6.83±1.41%(mean±SE)で正常対照10例(0.155±0.022%),多発性筋炎/皮膚筋炎の10例(0.211±0.071%)に比べ著明に増加していた(ともにp<0.001).さらにこの14例の8-OH-dG/dGは服用したグルココルチコイドの総量は有意に相関した(r=0.608,p<0.05). ステロイド筋症患者の骨格筋組織におけるミトコンドリア障害:上述の生検筋組織において,その電子伝達系酵素複合体(I-IV)の各々の活性を既報の吸光度法を用いて測定した.その結果,正常対照10例および多発性筋炎/皮膚筋炎の10例に比較して,電子伝達系酵素複合体Iにおいて有意に低下していた(ともにp<0.05). 以上の結果より,グルココルチコイド服用によりミトコントリアの機能障害をきたすこと,およびこの障害は電子伝達系酵素複合体Iの障害が主体であることが明かとなった.またこのミトコントリアの機能障害は,活性酸素の過剰産生に基くミトコンドリアDNAの障害と密接に関連しているものと考えられた.
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