研究概要 |
1.筋細胞培養系におけるグルココルチコイドの活性酸素産生への影響:ラットおよびヒト培養筋細胞(L6,RD)を用いて,グルココルチコイド添加(デキサメサゾン10^<-5>-10^<-7>M)後,3時間-7週間において,活性酸素(OH)をDCFH-DAを用いたフローサイトメトリー法により検討した.その結果,ヒト培養筋細胞(RD)ではデキサメサゾン10^<-5>と10^<-6>M添加では,3時間以降に活性酸素の増加が認められ,1週間後に活性酸素の産生が最大になった.またデキサメサゾン10^<-7>Mの添加では48時間以降に活性酸素の増加が認められ,やはり1週間後に最大であった.一方,ラット筋細胞であるL6細胞では活性酸素の産生増加はごく軽度であった. 2.筋細胞培養系におけるグルココルチコイドのミトコンドリア障害への影響:上記の実験系において,RD細胞のミトコンドリア膜電位の変化およびアポトーシスをJC-1およびAnnexin V/PIを用いたフローサイトメトリー法で検討した.その結果,ミトコンドリア膜電位は3時間後に増大したものの,24時間後には変化なく,48時間以後には低下した(10^<-5>-10^<-7>M).一方,早期のアポトーシスを反映したAnnexin Vのシグナルおよび後期アポトーシス/necrosisを反映したPIのシグナルはデキサメサゾン10^<-5>と10-<-6>M添加で3時間以降は増加していた.またデキサメサゾン10-<-7>Mの添加では明らかな変動は見られなかった.グルココルチコイドによるミトコンドリア障害が直接活性酸素の産生亢進によりもたらされたか否かを明かにするため,SOD(100u/ml)を併せて添加した場合には.活性酸素の増加は消失し,ミトコンドリアの膜電位の変化およびアポトーシスの増加も抑制された. 以上の成績よりグルココルチコイドを長期間投与すると,活性酸素の産生亢進とミトコンドリア膜電位の低下およびアポトーシスが誘起されることが明かとなった.
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