研究概要 |
1.グルココルチコイド服用患者におけるミトコンドリア機能:60例のグルココルチコイド服用患者でエルゴメーター運動負荷試験を行い,運動負荷中の血中乳酸値を測定したところ,服用グルココルチコイド総量に比例して血中乳酸値の上昇が見られた. 2.ステロイド筋症患者の骨格筋組織における活性酸素の影響:ステロイド筋症患者(14例)の骨格筋組織のミトコンドリアDNA中の8-hydroxy-deoxyguanosine(8-OH-dG)は,対照群より著明に増加し(P<0.001),グルココルチコイドの総量と有意に相関した(r=0.608,P<0.05). 3.ステロイド筋症患者の骨格筋組織におけるミトコンドリア障害:生検筋組織において,その電子伝達系酵素複合体活性は複合体Iにおいて有意に低下していた(P<0.05). 4.筋細胞培養系におけるグルココルチコイドの活性酸素産生への影響:ラットおよびヒト培養筋細胞(L6,RD)を用いて,グルココルチコイド添加(デキサメサゾン10^<-5>-10^<-7>M)後,3時間-7週間において,活性酸素(OH^-)をフローサイトメトリー法により検討した.その結果,ヒト培養筋細胞(RD)ではデキサメサゾン10^<-5>と10^<-6>M添加では,3時間以降に活性酸素の増加が認められ,1週間後に最大になった. 5.筋細胞培養系におけるグルココルチコイドのミトコンドリア障害への影響:4の実験系において,RD細胞のミトコンドリア膜電位の変化およびアポトーシスをJC-1およびAnnexin V/PIを用いたフローサイトメトリー法で検討した.その結果,ミトコンドリア膜電位は48時間以後には低下し(10^<-5>-10^<-7>M),Annexin V/PIのシグナルは増加していた.SOD(100u/ml)を併せて添加した場合には.活性酸素の増加は消失し,ミトコンドリアの膜電位の変化およびアポトーシスの増加も抑制された. 以上の成績よりグルココルチコイドを長期間投与すると,活性酸素の産生亢進とミトコンドリア膜電位の低下およびアポトーシスが誘起されることが明かとなった.
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