[目的] 副腎白質ジストロフィー(ALD)の治療法としては、早期の骨髄移植の有用性が示されている。骨髄移植の治療効果の発現機構を明らかにするために、正常細胞がALD細胞の代謝障害を是正するかどうかを調べた。 [方法] ALD患者由来の線維芽細胞163T(G418耐性)とマウスのミクログリア細胞株N9を混合培養、または両細胞をフィルターで分離して培養した。1週間後にG418によりN9のみを除去した。回収した163T細胞の極長鎖脂肪酸(VLCFA)をHPLCにより分析した。混合培養後の163T細胞のリグノセリン酸β酸化活性を測定した。また、ALD蛋白をウエスタンブロットにより調べた。 [結果] C26:0/C22:0の割合は163TとN9の細胞数を1:1および1:10で混合培養した場合、0.50および0.54と対照163Tの0.88に比して有意に低下していた。フィルターで分離して培養した場合には0.84であり、対照と有意差を認めなかった。163T細胞のリグノセリン酸β酸化活性の低下は混合培養により改善しなかった。ALD蛋白は混合培養後の163T細胞には検出されなかった。 [結論] 正常細胞はALD細胞のVLCFA蓄積を改善するが、その効果は液性因子によるものではなく細胞接触によって得られる。ALD蛋白が正常細胞からALD細胞に移入されることはない。
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