研究概要 |
McLeod症候群は伴性劣性遺伝を呈する稀な神経筋疾患である.昨年度は本症の一家系におけるXK遺伝子の解析を行い,その遺伝子異常を明らかにした.本年度は本症の神経筋病変の発症機構を明らかにする目的で,本症の原因蛋白であるヒトKx蛋白に対する抗ペプチド抗体を作成し,以下の研究を行った. 1)生検骨格筋におけるKxの発現 ヒトKxのアミノ酸配列より予想される部位の合成ペプチド(KNGLSEEIEKEVGQAEG)を作成し,それをウサギに免疫することによって,抗ペプチド抗体を作成した.まず,抗体の特異性を確認するために正常ヒト赤血球の塗抹標本をアセトン固定し免疫組織化学を行ったところ,赤血球膜が染色された.次に正常対照およびMcLeod症候群患者の生検骨格筋凍結標本を用いて免疫組織化学を施行した.方法は凍結標本をアセトンで固定した後に×1〜×1,600倍まで希釈した抗体を4℃で一晩反応させ,ビオチン化抗ウサギIgG, ABC法により4-chloro-naptholを基質として発色させた.また,FITC標識した抗ウサギIgGを用いて蛍光顕微鏡でも観察した.正常筋においてはKxは筋鞘核,間質および細胞質に濃染し,筋鞘膜は染色されなかった.一方,McLeod症候群患者生検筋においては正常に比べて正常筋で認められた縞状の構造が認められず,sarcoplasmic reticulumの染色性が低下していると思われた. 2)ラット脳および脊髄におけるKxの発現 まず,ラット脳および脊髄を用いて中枢神経系におけるKxの発現について検討した.免疫組織化学の方法は筋肉の場合と同様に行った.その結果,神経細胞の核膜を中心として一部細胞質にも染色性が認められたが,神経線維は染色されなかった.部位別の検討ではMcLeod症候群において高度に障害される尾状核のみならず,被殻,小脳顆粒細胞,延髄オリーブ核,大脳皮質の神経細胞を中心に広範囲に神経細胞が染色された.脊髄では前角細胞も染色された.RT-PCR法を用いた検討においてもXKmRNAは大脳および小脳に広範囲に発現していた.今後,本蛋白の発現量をウエスタン・ブロット法を用いて検討するとともに,in-site hybridizationを用いてmRNAの局在についても検討していきたい.
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