平成13年度はfMRIによる解析を行った。タスクは第2指の屈曲運動の反復で、健側手指運動、麻痺側手指運動、両側同時の手指運動の3種であり、20秒運動後20秒休息で3サイクル実施した。対象は正常者1名、亜急性期の片麻痺患者4名である。いずれも初診時には中等度以上の筋力低下があったが、検査時には手指運動が可能なまでに回復していた。なお、本研究は帝京大学医学部附属市原病院倫理委員会で承認され、被験者には検査の目的と方法を十分説明したあとで書面での同意を得た。 その結果、正常者では、片側運動で反対側の感覚運動野、その皮質下、補足運動野とわずかに同側感覚運動野が賦活され、両側同時運動では両側の感覚運動野とその皮質下、補足運動野が賦活された。いずれも狭い範囲に限局していた。片麻痺患者でも正常者と同様に、片側運動では反対側の感覚運動野、その皮質下、補足運動野が賦活され、両側同時運動では両側の感覚運動野とその皮質下、補足運動野が賦活された。しかしいずれも手指運動と同側の皮質の賦活は見られなかった。中大脳動脈の梗塞例で障害脳の賦活部位は上、前方に偏倚した。麻痺手指運動で補足運動野の賦活の少ないものが2例、障害脳の賦活が正常脳より強いもの、両側手指同時運動で補足運動野の賦活のないものが1例ずつあった。 随意運動のストラテジーは各自異なるように思われたが、予想に反して、障害脳の機能を代償すべく正常脳の感覚運動野野や補足運動野がより賦活されることはなかった。また、補足運動野の賦活部位が1側か、両側か、障害脳の賦活部位が本来の感覚運動野や補足運動野と全く同じ部位であるか否かの結論はまだ得られなかった。今後経過を追ったfMRIの解析と症例の集積が必要である。
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