神経系以外の腫瘍により、直接浸潤あるいは転移によらず様々な神経筋障害を生じることがあり、腫瘍随伴症候群と呼ばれる。神経筋接合部の障害として、悪性腫瘍に伴うLambert-Eaton症候群や胸腺腫に伴う重症筋無力症(MG)などがある。MGでは、後シナプス膜にあるアセチルコリン受容体(AchR)に対する自己抗体(抗AchR抗体)が出現する。MGにおける抗AchR抗体の産生機序は不明である。MGの15-30%に胸腺腫が合併し、また胸腺細胞はAchRを発現しうるので、胸腺腫のAchRが免疫源となり(antigen-driven)、抗AchR抗体が産生されるという仮説が提唱されているが、いまだ立証されていない。抗体産生におけるantigen-drivenの有無は、該当する抗体遺伝子の可変領域のsomatic mutationを解析することで判別できるが、本研究の目的は平成12年〜13年度内に、MGの自己抗体産生におけるantigen-drivenの関与を明らかにすることである。本年度は抗体遺伝子のクロノタイプをCDR3長で検出するための検討を行った。全RNAを抽出し、VH1-6のそれぞれに特異的なプライマーと免疫グロブリンの各アイソタイプに特異的なプライマーとを用いてRT-PCR法を行い、VH1-6のCDR3領域を含む全長を増幅し、シークエンスゲルにて展開することによりクロノタイプを検出することが可能であった。同時にMGの摘出胸腺サンプルの調整も進めており、局所のクロノタイプ検出やAchRの変異検出を行う予定であり、当初の実験計画に変更はない。
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