自己抗体遺伝子の可変領域のsomatic mutationを解析することで、自己抗体産生におけるantigen-drivenの有無を判別することが可能である。本研究では、末梢単核球をB細胞マーカーおよび蛍光標識した自己抗原とで2重染色した後に、フローサイトメーターで自己抗体産生B細胞を検出・回収し、自己反応性B細胞の免疫グロブリン遺伝子の解析を試みた。神経筋接合部障害をきたす腫瘍随伴症候群として、Lambert-Eaton症候群や重症筋無力症(MG)がある。MGでは、後シナプス膜にあるアセチルコリン受容体(AchR)に対する自己抗体が出現する。AchRは複数のサブユニットからなるため、本研究では精神神経ループスの自己抗原であるリボゾームP抗原などを用いて、自己抗体産生B細胞の同定を試みた。免疫グロブリン遺伝子の解析に関しては、全末梢単核球からRNAを抽出した場合、VH1-6のそれぞれに特異的なプライマーと各免疫グロブリンアイソタイプの特異プライマーとを用いてRT-PCR法を行い、VH1-6のCDR3領域を含む全長を増幅し、シークエンスすることが可能であった。しかし、複数の自己抗原を用いて染色実験を行ったが、自己抗体産生B細胞の回収は困難であった。フローサイトメーターの検出感度をあげるために、tyramideラジカルの生成を利用した蛍光シグナル増幅法を用いても、回収は困難であった。自己免疫疾患における自己抗体産生B細胞の頻度は極めて少ないと考えられる。
|