1.小脳刺激の痙攣抑制効果に関する研究 扁挑核キンドリングラットに対して、小脳半球あるいは外側小脳核に1日1回計40回の電気刺激を与え、後発射閾値(ADT)、後発射持続時間(ADD)およびけいれん閾値(SD)を測定した。40回の小脳刺激終了後、小脳半球刺激群、外側小脳核刺激群ともに偽刺激群に比し、ADT、STは有意(P<0.02)に上昇した。AD、SDに有意差はなかった。外側小脳核刺激群と小脳半球刺激群間に有意差は認められなかった。経時的変化では8週間の刺激期間を通してほぼ安定した抗てんかん作用が認められた。40回の小脳刺激終了1週後の、小脳半球および外側小脳核刺激群のADTおよびSTは、偽刺激群との間に有意差がなかった。1日1回の間歇的刺激では、抗てんかん作用は一過性であり、恒久的な抗てんかん作用を得られなかった。 2.ラット淡蒼球内節(GPi)刺激の痙攣抑制効果に関する研究 GPi電気刺激のてんかん重積状態への影響を検討した.成熟SDラットに、カイニン酸(KA)15mg/kgを腹腔内投与した後、GPiに固定された電極より電気刺激を行った.KA投与後、全例にstage5の痙攣発作重積状態が生じた.GPi持続刺激により、1/3で重積状態が間歇的に頓挫し、1/3はstage5の発作がstage2に軽減した.刺激中痙攣が完全に抑制されたものが1/3あった.非痙攣性重積状態に対して、2/3で抑制効果がみられた.刺激強度を痙攣閾値以上にすると、これらの抑制効果はなく痙攣が誘発された.GPi刺激は、痙攣閾値以下の刺激では、視床-皮質投射系の抑制を促通させる可能性が示唆された. 本研究により、小脳の抗てんかん作用は一過性であるが、淡蒼球の発作抑制作用には持続性がありてんかん発作の病態解明や治療法開発の可能性を示唆する結果となった.
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