研究概要 |
平成12年度科学研究費補助金を受けて,われわれは好塩基性封入体を伴う運動ニューロン病2例の剖検脳から好塩基性封入体を単離するための実験に着手した.まず,最も効率よく封入体を単離するため封入体の出現頻度のマッピングを行ったところ,大脳基底核がもっとも単離に適した組織であることが判明した.次に,単離のためにはmarker proteinが必要であるため,種々のタンパクに対する一次抗体を用いて好塩基性封入体の免疫組織化学染色を試みた.その結果,tau2やAT8など従来tau proteinの同定に通常用いられていた抗tau抗体は同封入体を認識しないことが判明し,抗ubiquitin抗体も封入体の一部を認識するに過ぎないことが明らかとなった.そこでわれわれは,他の細胞骨格タンパクに対する免疫染色を一斉に施行した.その結果,neurofilament subunits,MAP group,tubulin,actinなとほとんどの細胞骨格タンパク抗体に対して反応を示さなかったが,現在までのところ唯一cystatin C抗体に対しては,すべての封入体ではないが少なくとも一部は免疫反応を呈しているように見受けられた.Cystatin CはGolgi器官と関連するタンパクであるため,現在,免疫電顕法で確認を進めるとともに,抗Golgi zone抗体その他の関連抗体を用いて検索中である.好塩基性封入体とcystatinCあるいはGolgi器官との関連が確認されれば,これをmarker proteinとしてsucrose gradientによる単離を開始する予定である.またわれわれの症例のglia cellには抗tau抗体に陽性のものがあり,現在二重免疫染色法,免疫電顕法にて確認中である.
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