研究概要 |
加齢とParkinson病(PD)患者の記憶機能を事象関連電位N400を用いて検討した。対象は若年正常者17例(平均年齢25.7才)、高齢正常者17例(平均年齢,63.6才)、PD17例(平均年齢,65.8才)である。N400は再認記憶課題を用いて導出した。聴覚刺激として清音3音節名詞を提示した。1つのリストは30個の単語よりなり、合計12リストが被検者にヘッドホンを介して単語提示間隔3秒で異なる条件間隔(3秒,6秒,21秒)にて同じ単語が2回提示され、1回目に提示された単語に対しては右手第1指、2回目に提示された単語に対しては左手第1指にてボタン押しを要請した。ERP波形は初単語呈示、直後単語呈示(3秒後)、短遅延反復(6秒後)、長遅延反復(21秒後)の各条件において導出した。行動指標として反応時間、正答率も合わせて検討した。両正常者群間に直後反復後の正答率に差は無かったが若年正常群に比し、高齢正常群では短・長遅延反復で正答率が低下していた。高齢者群に比しPD群では長遅延反復後の正答率が低下していた。反応時間に関しては3群とも、直後反復、短遅延反復後、反応時間の短縮がみられ、プライミング効果と考えられた。しかし、いずれの群でも長遅延反復では反応時間はむしろ延長していた。3群とも初回単語呈示に対して刺激後470-500ミリ秒付近に頂点を有するN400成分が出現した。初回呈示によるN400振幅は加齢によって差は無かったがPD群では高齢群に比し低下していた。若年者では3お反復条件すべてでN400振幅の低下(N400反復効果)が見られたが、高齢者群、PD群では直後・短遅延反復のみでN400振幅の低下がみられた。以上から加齢、PDでは瞬時再認記憶は正常だが遅延記憶は障害される事が示唆された。また、正常加齢では文脈統合過程が比較的保たれているのに対し、PDの再認記憶障害の少なくとも一部は文脈統合過程の障害によることが示唆された。
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