【1】前年度報告と合わせて独立した家系の7名のHHH症候群患者の遺伝子を解析した。培養皮膚線維芽細胞より抽出したRNAよりRT-PCR、または白血球より抽出したゲノムDNAよりエキソンごとのPCRを行いORNT1のコード領域を増幅し塩基配列を決定した。7名はすべてホモ接合子であり、内4名が遺伝子変異を有しており、この変異は日本人に高頻度であることをさらに裏付けた。他の3名の患者には前年度報告した遺伝子変異G27E、insAACと新規遺伝子変異P126Rを見いだした。 【2】ナンセンス変異によるエキソンスキッピングに対するアミノグリコシド系抗生物質の抑制作用の検討は予定の通りには進行しなかったため、次年度に継続する。 【3】HHH症候群の原因遺伝子であるORNT1のホモログORNT2をオンラインデータベースでのホモロジーサーチにより見いだした。この遺伝子はイントロンを持たずプロセスドジーンの可能性があるが、オープンリーディングフレームは完全に保たれ偽遺伝子とは考えにくかった。ORNT1欠損および正常線維芽細胞にORNT2を発現させるとORNT1に比べるとかなり低いながらオルニチントランスポーター活性を検出した。活性の検出には^<14>C-オルニチン取り込み実験を行った。すなわち細胞を^<14>C-オルニチンと^3H-ロイシンを加えカバーグラス上で培養した後の細胞内^<14>C/^3H比がミトコンドリアオルニチントランスポーター機能を間接的ながら示すという方法である。この結果より、ORNT1の欠損ではORNT2がそれを補完できるほどのオルニチントランスポーター機能を持たないため発症すると考えられたが、ORNT2が別の機能を有するのか、または偽遺伝子になりつつあるのかは不明である。
|