【1】HHH症候群の原因遺伝子ORNT1のエキソンイントロン構造を決定した。ORNT1は5つのイントロンに分断されており、すべてのエキソンイントロン接合部はGT/AG規則に従っていた。 独立した家系のHHH症候群患者日本人8名とパレスチナ人2名(兄弟)の遺伝子を解析した。日本人患者8名はすべてホモ接合体であり、内4名が同じ遺伝子変異R179Xを有しており、この変異は日本人に高頻度であると考えられた。またR179Xはエキソン4の中央部に位置するナンセンス変異であるが、このためと考えられるエキソンスキッピングが生じていた。他の4名の日本人患者には遺伝子変異G27E、insAAC、P126R、R275Xを見いだした。パレスチナ人兄弟はいずれも新規遺伝子変異446G欠失のホモ接合体であった。 【2】アミノグリコシド系抗生物質によるナンセンス変異の読み飛ばし効果が知られているが、ナンセンス変異によって起こるエキソンスキッピングに対するアミノグリコシドの効果を調べた。R179Xを有する患者培養皮膚線維芽細胞の培養液にアミノグリコシドG-418を添加するとエキソン4のスキッピングが容量依存性に改善することがRT-PCRで示された。また^<14>C-オルニチン取込み実験を行うとORNT1産物の機能も改善していたことから、エキソンスキッピングの改善に加えR179Xの読み飛ばしも起こっていると考えられた。 【3】HHH症候群の原因遺伝子であるORNT1のホモログORNT2をオンラインデータベースでのホモロジーサーチにより見いだした。この遺伝子はイントロンを持たずプロセスドジーンの可能性があるが、オープンリーディングフレームは完全に保たれ偽遺伝子とは考えにくかった。ORNT1欠損および正常線維芽細胞にORNT2を発現させるとORNT1に比べるとかなり低いながらオルニチントランスポーター活性を検出した。
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