研究概要 |
ベラパミル感受性特発性心室頻拍(VT)は本邦に比較的多く見られるが、我々が経験した32例の平均年齢は28歳(15〜61歳)と若く、繰り返す頻拍発作のためにQOLが損なわれる場合が多い。その正確な機序は未だ明らかでないが、これまでの電気生理学的検討により我々は以下を報告してきた。(1)頻拍の機序は回路内に緩徐伝導路を有するリエントリーである(Am J Cardiol 1998)。(2)緩徐伝導の機序としてCaチャネル依存性伝導が主体で一部に抑制Naチャネルが関与する(Am J Cardiol 1996)。(3)VT中の左室内マッピングによりPurkinje電位(PP)に先行するlate diastolic potential(LDP)が心室中隔心基部寄りに記録され、カテーテルアブレーションの指標として有用であるとともに、その効果よりLDPはリエントリー回路上に存在する(Circulation1999)。今回、緩徐伝導における減衰伝導の機序をLDPとの関連で検討し以下の結果を得た。VT周期(VT-CL)はリドカイン(1,0mg/kg)投与後有意に延長し、ベラパミル(0.5-1.0mg)投与後にさらに有意に延長した。各薬剤投与後のVT-CLの延長度はLDP-PPの延長度と有意に相関した(各々r>0.9)。LDP前方の心室電位LDP間の伝導(V-LDP)は変化しなかった。Entrainment中に測定したLDP-PPはリドカイン後延長し、ベラパミル後さらに延長した。以上より、LDP遠位のコンポーネントは主としてCaチャネル依存性で、LDP近位のコンポーネントはNaチャネル依存性であることが示された(JACC2001)。現在リエントリー回路の局在を明らかにする目的で、V-LDPおよびLDP-PPの各間隔に対する複数箇所での高周波通電の効果と頻拍停止の関連について検討している。
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