この研究の目的は、日本人特発性心筋症症例におけるカルニチントランスポータ異常の頻度を求めることである。我々は非血縁関係の秋田県在住の日本人特発性心筋症40症例のカルニチン動態をインフォームド・コンセントを得て検索し、カルニチンクリアランスによるスクリーニングでは1例にヘテロ接合体の可能性を見いだしたが、この患者のOCTN2遺伝子解析(エキソン・イントロン境界部を含む全コード領域のゲノムDNAとmRNAレベルでの解析)の結果は正常であることが判明した。これは、対象者が御高齢のため食事内容にかなり偏りがあったためと推定している。さらに我々は7例の対象を追加検討したが、カルニチンクリアランスは正常範囲内にあると判断した。現在までに47例の対象を検査したが、カルニチントランスポータ異常は発見されていない。カルニチントランスポータ異常症の一部は、心筋症のみが前面にたって発症することが欧米で報告されているいるが、日本人においてはかなり低い頻度ではないかと推定している。可能であればさらに対象を追加検討する予定である。今後、この結果を遺伝病学・循環器学関係の日本学術集会、研究会などで発表し公表していきたいと考えている。
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