レプチンレセプター(ob・R)には5種類のアイソフォームの存在が知られている。レプチンレセプターob-Ra、ob-Rcのシグナル伝達はMAPK系、ob-RbはSTAT系を介する。心筋細胞の肥大・アポトーシス誘導にはMAPK系を介したシグナル伝達の関連が明らかとなっている。 虚血再灌流した心筋梗塞ラットを用い、虚血心筋におけるレプチンレセプター遺伝子(ob-R mRNA)の経時的変化を虚血再灌流直後から36時間後まで検討した。正常コントロールラットの心筋細胞には4種のアイソフォーム レプチンレセプター遺伝子(ob・Ra mRNA、ob-Rb mRNA、ob-Rd mRNA、ob-Re mRNA)がRT-PCR法で検出された。 ob-Rb mRNAの発現は虚血再灌流後低下し、4〜8時間で消失したが、ob-Ra mRNAの発現は時間依存的に増加し8時間でコントロールの7倍となった。一方、レプチン遺伝子(ob mRNA)の発現も8時間で有意に増加した。24時間後にはob-Ra mRNA、ob-Rb mRNAおよびob mRNAの発現レベルは正常コントロールレベルに戻った。p53 mRNAの発現レベルは虚血再灌流後、36時間で最大となった。また、虚血再灌流後36時間のラット心筋組織にはp53がウエスタンブロット法で検出され、免疫組織化学的検出法(TUNEL法)でもTUNEL陽性心筋細胞が確認された。 一方、レプチンを投与したob/obマウスの心筋においてp53 mRNAの発現増強が認められた。 虚血再灌流の障害心筋において、レプチンはレプチンレセプターのアイソフォームの発現変換により、p53由来のカスケードを含むメカニズムを介してアポトーシス誘導の一端を担っているかもしれない。
|