研究概要 |
レプチンの心血管系疾患との関わりを解析し、心血管系に対する治療法の開発を目的とする。レプチンがgp-130,STAT3を介して心筋細胞の肥大、増殖、分化に関与し、心筋を保護することを検証し、心不全の治療応用の可能性を示した。 実験結果は以下のごとくである。心血管系疾患における血中レプチン濃度を検討した。急性心筋梗塞や狭心症では、発症後48時間をピークに上昇するが、約20%の症例で低レプチン血症(<2.5ng/mL)であった。このグループは有意にMaxの心筋逸脱酵素が高く梗塞範囲が大きかった。このように低レプチン血症は心筋梗塞の悪化に関連した。また、動物実験で低レプチン血症と心臓病との関連を調べる目的で、レプチンのノックアウトされたobマウスに心筋炎ウイルスを投与した。野性型マウスでは2週間以上生存したが、obマウスは6日目で全滅し、心筋炎の増悪を認めた。更に心筋解析で、心筋細胞径がobマウスでは有意に小さくなっていた。野性型は心筋肥大と間質の繊維化がありobマウスではこの適応機構の破綻があった。そこで低レプチン血症は心筋炎、心肥大の防御に重要な役割を持つと考えた。 以上心血管系疾患の進展にレプチンは作用し、欠乏状態を補う治療が必要であると考えた。
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