研究概要 |
1、自己免疫性心筋炎の経過における心臓局所の遺伝子発現の検討 心臓から抽出した総RNA5μgからcDNAを合成し、44種類の遺伝子について、Light Cyclerを用いてmRNAコピー数の絶対量を測定した。α-ミオシン重鎖は発症後24.7倍減少し、一方β-ミオシン重鎖は4.6倍増加し、絶対量も逆転していた。ANP、BNPは発症早期から急激に増加し、それぞれ73倍、6.9倍と増加していた。AT1受容体、アンジオテンシン変換酵素、シエンドセリンIは発症早期あるいは極期にそれぞれ48.5倍,6.4倍、9.9倍増加していたが、アルドステロン受容体は1.42倍減少し、またアルドステロン合成酵素は正常では検出できず、発症により軽度発現がみられた。IL-2、INF-γは早期に11.8倍、43.2倍増加し、IL-10はそれより後にピークとなり、398倍増加していた。しかしそれらサイトカインの発現量は軽度であった。MCP-1は発症により127倍増加し、サイトカインに比して発現量は100-5000倍多かった。細胞外基質の3型コラーゲン、フィプロネクチンは発症により57.9倍、66.6倍増加し、極期の発現量は、心筋収縮蛋白、カルシウム結合蛋白に匹敵するものもあった。特にオステオポンチンは心筋炎早期に4570倍増加し、発現量は心筋炎早期に測定した中で最も多かった。 2、遺伝子治療を用いた治療効果判定による機序解明と新たな治療法確立のための検討 哺乳類細胞発現ベクターであるpCAGGSにIL-10蛋白、INF-γ受容体-IgGキメラ蛋白、CTLA-4-IgGキメラ蛋白およびSLPI-IgGキメラ蛋白を組み込み、ラット自己免疫性心筋炎の遺伝子治療実験を行った。4種類の蛋白とも、心筋炎を抑え、心体重比の減少、組織所見による心筋炎所見の軽減が認められ、有効と考えられた。INF-γ受容体-IgGキメラ蛋白の治療実験では、生存率でも明らかな有効性が認められた。
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