研究概要 |
1、心筋炎のマーカー sFasとsFasLは急性心筋炎の予後を規定する良いマーカーであった。またMCP-1はラットの自己免疫性心筋炎と同様にヒトの心筋炎の血中で著明な増加を示し、局所の反応を規定しているものと考えられた.血中のIL-10は心サルコイドーシスの良好な活性マーカーであった. 2、心筋炎の治療 低容量のカルベジロールは、ラットの拡張型心筋症に対して効果を示した.またキナプリルも心臓の繊維化を減らし、有効であった。ビソプロロールは心機能に影響は与えなかったが、予後をよくした。抗CD2抗体はラットの心筋炎に対して有効であった. 3、遺伝子治療を用いた治療効果判定による機序解明と新たな治療法確立のための検討 pCAGGSにIL-10蛋白、INF-γ受容体-IgGキメラ蛋白、CTLA-4-IgGキメラ蛋白およびSLPI-IgGキメラ蛋白を挿入し、遺伝子治療を行った。これらはすべて心筋炎を抑え、心体重比の減少、組織所見による心筋炎所見の軽減が認められ、有効と考えられた. 4、自己免疫性心筋炎の経過における心臓局所の遺伝子発現の検討 心臓中の44種類の遺伝子発現について、Light Cyclerにて測定した.α-ミオシン重鎖は発症後24.7倍減少し、一方β-ミオシン重鎖は4.6倍増加し、絶対量も逆転していた。ANP、BNPは発症早期から急激に増加し、それぞれ73倍、6.9倍と増加していた.AT1受容体、アンジオテンシン変換酵素,エンドセリンIは発症早期あるいは極期にそれぞれ48.5倍、6.4倍、9.9倍増加していたが、アルドステロン受容体は1.42倍減少し、またアルドステロン合成酵素は正常では検出できず、発症により軽度発現がみられた。IL-2、INF-γは早期に11.8倍、43.2倍増加し、IL-10まそれより後にピークとなり、398倍増加していた。しかしそれらサイトカインの発現量は軽度であった。MCP-1は発症により127倍増加し、サイトカインに比して発現量は100-5000倍多かった。細胞外基質の3型コラーゲン、フィブロネクチンは発症により57.9倍、66.6倍増加し、極期の発現量は、心筋収縮蛋白、カルシウム結合蛋白に匹敵するものもあった。特にオステオポンチンは心筋炎早期に4570倍増加し、発現量は心筋炎早期に測定した中で最も多かった。
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