研究概要 |
疾患の治療の目的で薬物を服用したために、心電図QT時間が著明に延長して不整脈から突然死をまねくことがある。これら薬物感受性のQT延長症候群がどのような薬剤によってもたらされるかについては、臨床的に多くの薬剤が原因になることが判明している。一方、薬物の作用点である心筋Kチャネル自身の異常特に遺伝子異常については、数年来世界各国で追及されているにもかかわらず今だほとんど発見されていない。これまでに報告のあった機能異常を示す変異Kチャネルは、その殆ど全てが薬物に対して感受性が低下していた。現在、薬物感受性不整脈をの原因として報告されている変異Kチャネル遺伝子については、terfenadine感受性の変異HERG遺伝子、clarithromycin感受性の変異MiRP遺伝子の二つのみである。本研究は、我々が独自に発見した心不全治療薬vesnarinone感受性の変異Kチャネル遺伝子を手がかりに、薬物誘発性の心室頻拍の病態を遺伝子レベルで解析しようとする先駆的研究である 本年度の成果としては、1)薬物結合部位として可能性の高いアミノ酸塩基を変異させたHERG遺伝子を数多く作成し、2)それらを利用していくつかの薬物について実際に薬物結合部位を想定したことである。具体的には、HERGチャネルのチャンネル内の内腔を形成するドメインS6とポア領域のアミノ酸を一つづつAlaに置換した変異遺伝子を作成し、それらをアフリカツメガエル卵母細胞に発現させで得たイオン電流に対するの作用を検討した。その結果、nesnarinoneについてはHERGチャネルのポア領域に6箇所の特定の結合部位を明らかにした。この結果はMo1 Pharmacology(Kamiya et al.,2001)に掲載された。またamiodaroneについて急性投与でHERGチャネル、長期投与でIksチャネルに抑制作用を示すことを明らかにし、Circulation(Kamiya et al., 2001)に掲載された。その他、methanesulfoanilide系第III群抗不整脈薬E-4031, Dofetilide、non-methanesulfoanilide系第III群抗不整脈薬MS-551, Bepridilについて共通の薬物結合部位(F656)を明らかにし、本年度の米国心臓病学会(2001)にて発表した。その内容は現在投稿準備中である。
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