研究概要 |
疾患の治療の目的で薬物を服用したために、心電図QT時間が著明に延長して不整脈から突然死をまねくことがある。臨床的に多くの薬剤が心筋KチャネルクローンであるHERG電流を強く抑制することが原因とされており、安全な新薬を開発する上で重大な障害になっている。本研究は、この薬物誘発性のQT延長症候群の分子機序を解明しようとする先駆的な研究である。強心薬(vesnarinone)、第III群抗不整脈薬(E-4031,dofetilide, MS-551,bepridil)について、HERGチャネルと薬物結合の特性とチャネル内薬物結合部位を特定した。2年間にわたる本研究の結果いくつかの新しい知見を得ることができた。具体的な成果としては、1)薬物結合部位として可能性の高いアミノ酸塩基を変異させたHERG遺伝子を数多く作成し、2)それらを利用していくつかの薬物について実際に薬物結合部位を想定し、3)HERGチャネルと薬物の相互作用に関してその分子機序をある程度解明した。実際に行ったのはは、HERGチャネルのチャンネル内の内腔を形成するドメインS6とポア領域のアミノ酸を一つづつAlaに置換した変異遺伝子を作成し、それらをアフリカツメガエル卵母細胞に発現させで得たイオン電流に対するの作用を検討した。その結果、vesnarinoneについてはHERGチャネルのポア領域に6箇所の特定の結合部位を明らかにした。この結果はMol Pharmacology (Kamiya et al., 2001)に掲載された。またamiodaroneについて急性投与でHERGチャネル、長期投与でIKsチャネルに抑制作用を示すことを明らかにし、Circulation (kamiya et al., 2001)に掲載された。その他、methanesulfoanilide系第III群抗不整脈薬E-4031,Dofetilide、non-methanesulfoanilide系第III群抗不整脈薬MS-551,Bepridilについて共通の薬物結合部位(F656)を明らかにし、本年度の米国心臓病学会(2001)にて発表した。その内容は現在投稿準備中である。
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