動脈硬化ラビットでの検討 0.5%コレステロール食負荷にて動脈硬化ラビットを作成し、人間の動脈硬化病変に近いモデルでのPGI_2合成酵素遺伝子導入の効果を検討した。右総腸骨動脈にステントを留置し、lipotransfection法によりPGI_2合成酵素遺伝子を導入した結果、(1)導入された血管局所においてPGI_2合成の促進が認められ、(2)ステント留置後の内皮再生が加速し、(3)新生内膜形成が有意に抑制された。また(4)PGI_2合成酵素遺伝子が導入された血管には、血管内皮増殖因子(VEGF)が強く発現することが証明されたことから、VEGFがPGI_2合成酵素遺伝子導入における血管新生過程に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 ラットバルーン傷害モデルでの検討 すでに我々は上記モデルにおいてPGI_2合成酵素遺伝子導入の効果を確認しているが、この際にシクロオキシゲナーゼ(COX)が果たす役割については不明な点が多い。我々は、バルーン傷害血管にCOX-2の発現が誘導され、産生されたPGH_2に遺伝子導入したPGI_2合成酵素が作用して内因性PGI_2の過剰産生が得られるとの仮説を立て、この仮説を検証するため選択的COX-2阻害剤であるJTE-522を用いて検討した。 免疫染色の結果から(1)バルーン傷害後に形成された新生内膜内にはCOX-2の発現が認められた。さらにPGI_2合成酵素遺伝子導入により、(2)PGI_2合成の促進が認められ、(3)新生内膜形成は有意に抑制されたが、(4)JTE-522投与によりこれらの効果はいずれも失われた。以上から、バルーン傷害血管に対するPGI_2合成酵素遺伝子導入による内因性PGI_2過剰産生には、バルーン傷害後に血管壁に発現、誘導されるCOX-2が主に関与していることが示唆された。
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