研究概要 |
現在我々は,上記の研究課題に対し以下の如く解析を進めている。従来のGPIbのvWF結合部位同定法の問題点は,申請書の如くGPIbα鎖の複雑な高次構造領域に関する検討が不十分なことにある。従って我々はこの問題を解決するべくGPIbα鎖の第301アミノ酸のC末端側にtagとストップコドンを導入した合成GPIbα鎖発現ベクター,及び同様の基本構造ながら同領域内に存在する向電アミノ酸をアラニンに置換した41種のクラスター変異型GPIbα鎖発現ベクターを作成し,細胞感染後上清中に分泌された野生型及び変異型GPIbα鎖を作成し,これを用いて結合部位を解析している。合成GPIbα鎖のvWFに対する結合性は,tagとその抗体を用いて野生型及び変異型合成GPIbα鎖を固相化したプレートと125IでラベルしたvWFを用いたRIAシステムを用いた。GPIb-vWF結合は,結合誘導因子であるリストセチンとボトロセチンを用いて施行した。この結果,ロイシンリッチリピート内の変異体であるE128A及び(172-175)2Aでは何れの結合誘導因子による結合とも低下した。また,リストセチン依存型結合のみの単独低下は(12-14)2A,D106K,(149-152)3Aの3変異で,ボトロセチン依存型結合のみの単独低下は(217-218)2A,(285-287)2A,K301Aの3変異で認められた。以上の結果から,これらの7種類の変異体に含まれるアミノ酸残基がvWF結合に中心的役割を演じている可能性が示唆された。しかしながらこの中には、vWFに対する結合性の低下が結合中心部に存在するアミノ酸残基の置換によるものと、蛋白のマクロな立体構造変化によるものが含まれると考えられた。従ってマクロ立体構造変化によりvWFに対する結合性低下を呈した変異群を除外するために立体構造感受型抗GPIbα鎖モノクローナル抗体を用いた検討を進めている。
|