エンドセリン(ET)-1はアンジオテンシンII産生系と同様にET変換酵素(ECE)によって前駆体Big-ETからET-1へ変換され、ET-A及びET-B受容体を介して血管収縮、心筋細胞肥大や線維増生に機能する。 (1)ETA受容体拮抗薬FR139317、ETA/B ; TAK044、ETB ; K8794を、ヒト拡張型心筋症に相当する高頻度右室ペーシング心不全イヌに投与し、心不全でのETの意義を検討した。ETはETA受容体を介して血管抵抗を増加させ、糸球体濾過率、腎血漿流量を低下させ水ナトリウム貯留的に働くが、遠位尿細管での水再吸収には関係しない。しかしETB受容体を介しては、血管抵抗を低下させ腎血漿流量の増加させる。さらに遠位尿細管、集合管での水再吸収を低下させ体液排泄的に作用している。しかしレニン-アンギオテンシン-アルドステロン(RAA)分泌を有意に抑制している事が明らかになった。 (2)ECEとアンジオテンシン変換酵素(ACE)両阻害が心筋リモデリングの形成過程に単独阻害よりも有効かは明かにするため、ECE阻害薬FR901533とACE阻害薬エナラプリルを慢性併用投与し心筋リモデリングに及ぼす効果を単独群と検討した。ECE/ACE阻害薬は各単独治療群と比して左室径の拡大を防止し、左室内圧の上昇を抑制した。不全心でのSR Ca2+-ATPase mRNAのupregulationに伴い、拡張能の指標である時定数タウの有意な短縮を認めた。線維化の指標であるcollagen I、III mRNAの発現を低下させ、picrosirus red染色で定量したコラーゲン蓄積を抑制した。ECEを介したET-1産生は心リモデリング形成に重要な役割を演じているが、ECE/ACE両阻害薬は単に血行動態の改善にとどまらず、Caハンドリングの改善、線維化抑制を介して単独阻害に比してより心不全改善効果を有すると考えられた。
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