研究概要 |
我々はQT延長症候群(LQTS)患者を対象にカリウム・チャネルをコードするKCNQ1(LQT1),KCNH2(LQT2)、KCNE1(LQT5)、KCNE2(LQT6)とナトリウム・チャネルをコードするSCN5A(LQT3)の機能的に重要と考えられる部分に対応する塩基配列を挟む形でPCRを行いSSCP法にてスクリーニングを行った。LQTS患者は、家族性に発症したケースのみならず、薬剤などの2次性LQTS症例も対象とした。その結果、あらたにKCNQ1の7変異、KCNH2の6変異、SCN5Aの3変異、さらに、KCNQ1の2つのSNP (single nucleotide polymorphism)を発見した。また、昨年、報告された心筋inward rectifier K channelをコードするKCNJ2の2つの変異を見つけた。これらの2家系でのaffected memberは心室性不整脈(QT延長)と周期性麻痺が合併しており、いわゆるAndersen症候群の亜型であることが判明した。KCNQ1の2つのSNPにおいて、おなじSNP変異を遺伝子組換え法で作成し、培養細胞を用いた機能解析を行ったところ、G643S変異において軽度ではあるが、有意なIks電流の発現低下が認められ、臨床像(QT延長、2次的因子で顕著化する)との関連が示唆された。もうひとつのSNPであるP448Rについては有意な機能変化を認めなかった。このような機能解析を通して各々のチャネル遺伝子の変異により招来される機能異常の差から、臨床像を推察することができるようになって来た。また、日本人に特異的なSNPと本症候群との関連も明らかとなり、薬剤投与時のリスク回避の一助として役立つものと考えられる。
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