研究概要 |
<仮想環境下における運動負荷の健常人における安全性と有効性の検討> 平成12年度に行った50%AT(嫌気性代謝閾値)等の運動中、後において、仮想環境(バーチャルリアリティ)の有無は、血圧、心拍数、心拍変動の自律神経指標であるLF(low Frequency成分)、HF(high Frequency成分)、カテコラミンなどの体液性因子の到達値に直接影響せず、負荷開始時の心拍増加反応の遅延傾向すなわち交感神経活性興奮過程での自律神経活性への関与が示唆された。平成13年度は、負荷中止時に仮想環境の存在が、自律神経活性変化に関与するかを検討するため、健常人9名を対象に安静時心拍の10-20%程度の増加をきたす低負荷運動を施行した。健康男性9名に対しベツドサイドウェルネスシステムの負荷可変足踏みペダルにより安静時心拍数の10〜20%程度の増加を実現する運動負荷プロトコールを決定した。仮想環境の有無により、経時的な心拍数の変化を検討した。安静時/運動時/運動終了30秒それぞれの平均心拍数は仮想環境の有無による変化を認めなかった(VR(+);64±6,93±9,68±7,VR(-);65±7,91±9,67±9 bpm)。運動終了後の心拍数回復過程は、仮想環境下での運動で迅速である傾向を認めたが、統計的有意差を認めるには至らなかった。 平成12年度の嫌気性代謝閾値での運動および今回の低負荷運動での検討から、仮想環境下での運動は、負荷量を一定とした場合、到達する自律神経性および体液性因子の賦活化レベルに影響しないが、負荷開始時、負荷終了時には交感神経活性抑制/副交感神経活性化の方向に作動する可能性が示唆された。ベッドサイドウエルネスシステムを用いた仮想環境下の可変足踏みペダルによる運動負荷は、安全に施行しうることが明らかになった。今後は、心不全を対象に仮想環境下での運動の安全性・有用性を検討していく予定である。
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