血管内エコー法は、先端に超音波探触子を装着した直径約1mmのカテーテルを直接生体の血管に挿入し血管壁の断面像を生体から得る唯一の方法として開発されたものである。申請者は、この血管内エコー法が動脈硬化プラークの組織性状や物理的硬度についてどれだけの情報をもたらしてくれるかについて詳細に検討した結果、動脈硬化病変の組織性状、特に脂肪領域やコラーゲン含有量などを同定することに関しては、従来の白黒画像方式の血管内エコー法はあまりにも信頼度が低い方法であることが判明した。そこで、とくに心筋梗塞や狭心症など動脈硬化病変を有しかつ緊急に診断を要する患者について、もっと視覚的でリアルタイムに冠状動脈硬化病変の組織性状の情報を提供してくれる方法の開発が望まれる。 今回申請者は組織のエコー輝度の超音波入射角度依存性に着目した。そしてそれを、通常の血管内エコー法と重ね合わせてカラーマッピングする方法を開発した。この新しい方法により従来の白黒血管内エコー法では不可能であった動脈硬化プラークの線維性被膜の同定が可能となる。これについてはすでに予備的な研究を行っていたが、平成12年度は画像表示に関するコンピュータプログラムの開発を行ったほか、基礎的データを論文にまとめ学術雑誌に投稿し受理された。 心筋梗塞などを含む急性冠症候群は冠動脈プラークの表面を覆う線維性被膜が断裂して血栓が形成されることにより起こるとされている。線維性被膜が菲薄化したプラークは不安定プラークと呼ばれ、心筋梗塞に至りやすいとされる。このように線維性被膜の厚さは動脈硬化病変の安定性を決めるきわめて重要な因子であり、それを生体で描出できる意義は極めて大きいと考えられ、今後臨床応用を行う予定である。
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