平成13年度は前年度の結栗を敷衍して不全心筋の収縮調節におけるGTP結合タンパク質を介する情報伝達系の異常を見いだし、心不全治療のターゲットとなる遺伝子を決定するための基礎実験を発展させた。 1)イヌの心不全モデルで、(1)GTP結合タンパク質Gq-RhoA-Rho kinaseを介する情報伝達が亢進しミオシン軽鎖のリン酸化を亢進させ、その結果収縮タンパク質カルシウム感受性を増強させること、(2)βアドレナリン受容体刺激による収縮タンパク質カルシウム感受性抑制作用が減弱していること、を観察した。これらの収縮タンパク質カルシウム感受性調節機構の異常が収縮不全の代償機構および、拡張不全の一機序となっている可能性がある。(論文発表済み) 2)心筋においても平滑筋と同様にミオシン軽鎖のリン酸化はカルモデュリンやcGMPで影響され、それに伴って収縮タンパク質のカルシウム感受性が調節されていることを観察した。(論文発表済み) 3)1)に述べたようにGq-RhoA-Rho kinaseによるミオシン軽鎖のリン酸化亢進が不全心筋の機能異常の一因である可能性がある。Gq-RhoAをターゲットにした組み換え遺伝子導入実験を行う前に、薬物を用いた基礎実験を遂行した。ラットの高血圧性心肥大→心不全モデルに対しRho kinase阻害薬であるY-27632を経口的に長期投与すると心肥大が抑制され、収縮機能が改善された。(論文準備中) 4)Gqにより活性化される可能性のある新しいカルシウムチャネルTRP遺伝子の心筋細胞における機能解析を目的として、組み換えアデノウィルス・ベクターを用いた培養心筋細胞への遺伝子発現実験を遂行中である。
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