研究概要 |
動脈硬化は病理学的特徴から粥状動脈硬化病変と線維筋性硬化病変に大別される。線維筋性肥厚動脈硬化病変形成のメカニズムについては、中膜平滑筋が脱分化・遊走し内膜において増殖して細胞外基質を産生・蓄積するとの説が広く受け入れられているが、「線維筋性動脈硬化病変形成に血液単核球由来の線維細胞様-平滑筋細胞様細胞が関与している」との仮説を検討するために、ヒト末梢血血球細胞から血管平滑筋様細胞が出現するかを検討した。ヒト末梢血単核球分画をdensity gradientにより分離しヒト血管平滑筋培養用特殊培地にて培養すると、培養3日目から培養dishに接着したspindle shape cellが出現し、この細胞は30日間以上に渡って培養可能であった(Fibromucular Cell ; FMC)。20-30日培養したFMC細胞のphenotypeを検討したところ、calponin,血管平滑筋α-actin, SM22a, SM-1,Type-I collagenを発現していることが明らかとなった。FMCにおける血管平滑筋α-actinの発現はRT-PCR、Western blotting、細胞免疫染色にて確認した。更に末梢単核球における血管平滑筋α-actin発現を検討したところ、ヒト末梢単核球に於いて血管平滑筋α-actin mRNA発現が認められ、末梢血液中に於いて既に血管平滑筋様phenotypeを示す細胞が存在することが示された。ヒト末梢単核球に於いてはType-I collagen発現は陰性であったことより、Chesney & Bucalaらの報告したマウスにおけるFibrocyteとは異なっていた。比重d=1.071を基準として末梢単核球を低比重又は高比重分画に分けて血管平滑筋α-actin発現を検討すると低比重分画にその発現が認められ、更にそれぞれの分画を個別に培養すると低比重分画からFMCが分化・生存してくることが確認された。以上よりヒト末梢単核球分画には、血管平滑筋様細胞に分化・生存できる可能性を持った細胞が存在することが明らかとなった。
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