研究課題
基盤研究(C)
心筋内冠循環系は小動脈(穿通枝)、細動脈、毛細血管、細静脈、小静脈などより構成されるが、研究代表者は高周波探触子を用いた経胸壁ドプラ法により肥大型心筋症患者の小動脈血流シグナルが描出され、同時に約半数の頻度に加速血流シグナル、すなわち小動脈の狭窄部位が描出されることを見出した。小動脈の血管内圧は細動脈よりも高いために加速血流シグナル部位で生じる圧較差はその遠位部の圧を減少させ、下流にある細動脈領域の濯流障害あるいは代謝障害を生じることが推測される。研究代表者は心筋小動脈の狭窄(加速血流シグナル)はその末梢の抵抗血管である細動脈領域の心筋濯流に影響を与えるという仮説をたて、その実証のために心筋内小動脈(穿通枝)のみに狭窄病変をもつL-NAME(N-Nitro-L-arginine Methyl Ester Hydrochororide)摂取モデルミニブタに対し、高周波探触子を用いたカラードブラエコー法を用いて小動脈血流内の狭窄部位を同定し、ATP(0.14mg/kg/min)にて心筋虚血を誘発後、その下流域にある細動脈・毛細血管レベル(microcirculation領域)の濯流障害を心筋コントラストエコー法を用いてその染影度の変化を観察した。5頭のミニブタに対し、L-NAMEを4週間摂取後、開胸下にカラードブラ法を用いて心筋内小動脈血流を描出した。小動脈血流内の加速血流シグナルのある血管とない血管の同時描出は3頭において得られ、ATP負荷によるそれぞれの血管領域における心筋染影度の観察は2頭において観察可能であった。加速血流を有する小動脈の心筋領域の染影度は加速血流を有さない小動脈領域の染影度と比較し、心筋コントラストエコー図上減少していることが肉眼的に認められ、同血管での狭窄はその末梢にある細動脈・毛細血管レベルの濯流に強い影響をもつという仮説と一部合致する結果が得られた。本研究の結果より、小動脈狭窄がその末梢の細動脈レベルの心筋濯流に影響していることが示唆され、機序としては、ATP負荷により狭窄のない小動脈領域の細動脈は拡張し心筋血流が増加するのに対し、狭窄のある小動脈の領域は細動脈がすでに拡張しているため、ATP負荷しても細動脈は拡張せず、そのため同領域の血流増加はほとんどなく、その結果狭窄小動脈領域の心筋染影度は狭窄のない小動脈領域に対し相対的に低下するためと思われた。しかし、本研究では画像の再現性、コントラスト剤の種類、注入のタイミングなど検討すべき課題があると思われ、また鮮明な画像を得るためには動脈からのコントラスト剤の直接注入による方法が有効であると考えられた。また、コントラストエコー図による染影度の定量的評価、さらにはTTC染色などによる心筋の組織学的な検討も必要であると思われた。_
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