研究概要 |
圧および容量負荷による心肥大が形態学的に異なることは明らかにされているが、分子的反応についての検討は行われていない。本研究では、コンピューターを用いてペーシングと伸展刺激を制御することによって、圧および容量負荷による肥大心モデルのためのin vitroのシステムを開発し、その分子機構の相違を検討した。 1.圧および容量負荷による肥大心モデル(In vitro)の作成 ラット培養心筋細胞の心拍数が毎分40以下になった時点で、毎分60回、刺激電位70Voltでペーシングし、コンピューターにより収縮期または拡張期のみに細胞を伸展させた。このシステムにおけるペーシングによる心筋細胞の捕捉率は、刺激電位70Voltで80〜90%である(Circulation,in press)。 2.圧負荷および容量負荷による肥大心モデル(In vitro)における分子機構の相違 ERK1/2およびMEK1/2のリン酸化は、収縮期伸展において拡張期伸展に比し早期に、高度に認められたが、JNKおよびp38-MAP kinaseのリン酸化には差が認められなかった。[^3H]leucineの取り込みは、収縮期伸展において拡張期伸展に比し有意に増加した。この収縮期伸展刺激による[^3H]leucineの取り込みの増加は、MEK1/2阻害薬PD98059によって有意に抑制された(Circulation,in press)。 心筋細胞において、圧負荷モデルである収縮期伸展が拡張期伸展より重度の心肥大をもたらし、そのシグナル伝達においてERK1/2経路が関与していることを明らかにした。圧および容量負荷による心肥大において、機械的シグナル伝達に相違がある可能性が示唆された。現在さらに、臨床例においても心疾患患者において圧および容量負荷のかかった心房筋の遺伝子発現をDNA Chipによって、解析しているところである。
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