研究概要 |
圧および容量負荷による心肥大が形態学的に異なることは明らかにされているが、分子的反応についての検討は行われていない。今年度の本研究では、圧および容量負荷のかかった右心房筋の遺伝子発現をDNAチップによって解析したところ、コントロール群および容量負荷群に比べ、圧負荷群ではcyclin-dependent kinase inhibitor 1A(CDKI1A, p21,11.7±3.1fbld vs control)及びdual specificity phosphatase 1(DSP-1,MKP-1,26±22.1fbld)mRNAの発現が有意に(P<0.05)亢進していた。DNAチップによってスクリーニングされたこれら発現冗進遺伝子(CDKI1A、MKP-1)について、それぞれ特異的primerを用いてreal-timePCR法をおこなったところ、圧負荷群でCDKI1A(2.4±0.5fold vs control)およびMKP-1(6.2±4.7fold)mRNAの発現が亢進しており、その定量性が確認された。さらに、Westemblot法の検討で、ラット培養心筋細胞において、機械的伸展刺激は強度依存性にCDKI1AおよびMKP-1蛋白発現を亢進させた。本研究により、in vivoヒト圧負荷心房筋においてCDKI1AおよびMKP-1mRNA発現が、in vitro培養心筋細胞において機械的ストレスによってCDKI1AおよびMKP-1蛋白発現が冗進することから、圧負荷や機械的伸展刺激時の細胞増殖に向かう生体反応に対し、自己防御的に細胞周期の制御もしくは細胞増殖の抑制を行うことで、自ら平衡状態を保つ方向に調節している可能性が示唆された。現在、さらにα-myosin heavy chainのpromoterを用いでCDKI1A(p21)を心臓特異的に発現させたトランスジェニックマウスを作成し、心肥大におけるCDKI1Aめ役割を検討している。
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