圧および容量負荷による心肥大が形態学的に異なることは明らかにされているが、分子的反応についての検討は行われていない。本研究では、圧および容量負荷による心肥大における分子機構を解明した。 1.コンピューターを用いてペーシングと伸展刺激を制御することによって、圧および容量負荷による肥大心モデルのためのin vitroのシステムを開発し、その分子機構の相違を検討した。ラット培養心筋細胞においてERK1/2およびMEK1/2のリン酸化は、収縮期伸展において拡張期伸展に比し早期に、高度に認められたが、JNKおよびp38-MAP kinaseのリン酸化には差が認められなかった。[^3H]leucineの取り込みは、収縮期伸展において拡張期伸展に比し有意に増加した。この収縮期伸展刺激による[^3H]leucineの取り込みの増加は、MEK1/2阻害薬PD98059によって有意に抑制された。 2.圧および容量負荷のかかったヒト右心房筋の遺伝子発現をDNAチップによって解析したところ、コントロール群および容量負荷群に比べ、圧負荷群ではCDKI1A及びMKP-1 mRNAの発現が有意に亢進していた。さらに、Western blot法の検討で、ラット培養心筋細胞において、機械的伸展刺激は強度依存性にCDKI1AおよびMKP-1蛋白発現を亢進させた。 本研究により、圧および容量負荷による心肥大においてその分子メカニズムに相違がみられたことから、圧および容量負荷による心肥大に対して、それぞれ個別の新たな治療戦略が必要であることが示唆された。
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