(はじめに)慢性心筋炎と心筋症との関連が推測されているが、慢性ウイルス性心筋炎がどのような経緯で拡張型心筋症に移行していくかというメカニズムはまだ不明である。急性ウイルス性心筋炎から慢性心筋炎に移行するメカニズムもまだ明らかではない。本研究では動物実験において慢性心筋炎成立のメカニズムと、それが拡張型心筋症に移行し得るか否かを検討した。(方法)生後1-2日のSD、Wistar、FisherラットにコクサッキーB3ウイルスを腹腔内投与、対照僻(コントロール)とともに6ケ月飼育、ペントバルビタール麻酔下で心臓を摘出、以下の実験を行った。1.ホルマリン固定を行った心臓から心筋切片を作製、Masson trichrome染色後光顕にて観察。2.凍結心筋切片に抗CD4、抗CD8、抗MHC class I、抗MHC class IIモノクローナル抗体を用いて免疫組織学的検索を行った。3.rapid in situ hybridizationを用いた心筋内ウイルスゲノムの検出。(結果)病理組織学的には心臓の心内膜直下に線維化がみられるのみで心筋細胞の脱落、置換性線維症は見られなかった。コクサッキーB3ウイルスゲノム検索では陰性であった。免疫組織化学的検索ではCD4、CD8陽性細胞が数個単位で集まっているのがみられた。MHC class Iはコントロール群と同様ほとんど陰性であったが、class IIはコクサッキーB3投与群でわずかに陽性を示した。(まとめ)ラットに対するコクサッキーB3腹腔内接種後6ヶ月(慢性期)の観察ではあきらかな心筋炎の持続は認められなかった。
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