(はじめに)拡張型心筋症の20〜30%は慢性ウイルス性心筋炎が原因ではないかと推測されれている。しかし、慢性ウイルス性心筋炎がどのような経緯で拡張型心筋症に移行していくか、また、急性ウイルス性心筋炎から慢性心筋炎に移行するメカニズムはまだ明らかではない。本研究では上記メカニズム解明のための動物実験を行った。(方法)生後1、2日のSD、Wistar、FisherラットにコクサッキーB3ウイルス(CVB3)を腹腔内投与、接種後3日、14日、6ヶ月の時点で、ペントバルビタール麻酔下で心臓及び他臓器を摘出、以下の実験を行った。1.ホルマリン固定を行った臓器から組織切片を作製、Masson trichrome染色後光顕にて観察。2.凍結切片に抗CD4、抗CD8、抗MHC classI、class IIモノクローナル抗体を用いて免疫組織学的検索を行った。3.rapid in situ hybridizationを用いたウイルスゲノムの検出。(結果)接種後3日、14日ではrapid in situ hybridization法で心臓、腎臓、胸腺にCVB3ウイルスゲノムを認めた。一方6ヶ月の時点ではCVB3ウイルスゲノム検索では陰性であった。また、病理組織学的には心臓の心内膜直下に線維化がみられるのみで心筋細胞の脱落、置換性線維症は見られなかった。免疫組織化学的検索ではCD4、CD8陽性細胞が数個単位で集まっているのがみられた。MHC class Iはコントロール群と同様ほとんど陰性であったが、class IIはコクサッキーB3投与群でわずかに陽性を示した。(まとめ)ラットに対するコクサッキーB3腹腔内接種後2週以内の急性期ではウイルスゲノムは臓器に存在するが、6ヶ月(慢性期)の時点ではあきらかな心筋炎の持続は認められなかった。
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