研究概要 |
目的 本年度はエストロゲンが心機能障害の発生に関与するかどうかを明らかにする目的で摘出灌流心モデルを用いて,エストロゲンの心血行動態に与える影響を,好気的灌流あるいは虚血再灌流条件下に検討した. 方法 SD系ラット摘出心をWorking heart modeにて灌流.灌流液にKreb's-Henseleit bicarbonate bufferを用い,基質とし11 mM glucoseを添加. 1)実験1;30分間の好気的灌流を行い、1uM,10uMの17β-Estradiolを加え,血行動態に与える影響を薬剤非投与群と比較検討. 2)実験2;好気的灌流の後、一方向性バルブを作動させることにより拡張期の冠灌流を遮断し10分間の虚血を作成し,20分間の再灌流を行った.虚血負荷を一定にする為虚血中に200bpmのペーシングを加えた.10μM17β-Estradiolを虚血前に投与し心機能に与える効果,再灌流不整脈に対する効果について非投与群と比較検討した.灌流中,心血行動態として大動脈流量、冠灌流量,左室圧を測定し,心電図をモニターした. 結果 好気的灌流では1μM,10μMの17β-Estradiolは心拍出量,心拍数に影響は与えなかった.しかし,再灌流後の心拍出量の回復は薬剤非投与群に比較し改善傾向を示した(41.0±9.3,28.1±11.2ml・min-1).再灌流不整脈の発生率、持続時間は薬剤非投与群におい67%,800±253sec(p<0.05vs17β-Estradiol投与群)であった.一方,17β-Estradiol投与群では再灌流不整脈は完全に抑制された. 考察 エストロゲンの虚血再灌流傷害の抑制をin vitroな系で確認した.エストロゲンはNOによる血管拡張作用や細胞内カルシウムの関与によって心筋保護作用を示す事が考えられている.次年度以降はこれらエストロゲンの心筋保護作用の機序について細胞内Ca変化、脂質代謝といった面からさらに検討を行う予定である.またエストロゲンの心保護作用を卵巣除去モデルラットを用いたin vivoの系で行う予定である.
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