研究概要 |
【目的】 estrogenの心筋保護作用の機序を解明するため本年度は、卵巣剔出術(OVX)によるestrogen低下ラットを作製し、摘出灌流心法により心血行動態の変化を検討した。また,同ラットにestrogenを再負荷し、心機能がどのように変化するかを検討した。 【方法】 実験1;雌性SD系ラット(150g)を用い、腹腔麻酔下にて開腹し卵巣を摘出、OVXラットを作製、2週後あるいは4週後に心臓を摘出しWorking heart modeにて灌流し、心筋虚血8分および再灌流20分を行い心血行動態の影響を検討した。 実験2;同OVXラットにestrogenペレットを皮下に植え込みestrogen負荷ラットを作製し同様の検討を行った。 【結果】 再灌流後の心拍出量の回復はコントロール群で虚血前値の95%(2W),91%(4W)であったのに対し、卵巣摘出群では82%(2W),55%(4W)と有意な低下を示した。Sham-operated群では再灌流不整脈を認めなかったのに対して、卵巣摘出群では17%(2W)、50%(4W)の発生率を示した。一方、17β-Estradiol投与群において、虚血再灌流後の心拍出量は虚血前値の97.7±1.8%まで回復したのに対して、卵巣摘出群では55.2±16.2%であった。 また、冠動脈灌流量も17β-Estradiol投与群において、虚血再灌流後は虚血前値の93.2±1.7%まで回復したのに対して、卵巣摘出群では75.8±8.5%であった。また、卵巣摘出群における灌流液中のNOxレベルは17β-Estradiol投与群に比較し、有意な低下を示した。そして、再灌流後の心機能の回復の悪化は、NOドナーであるFK409(10uM)投与にて軽減された。 【考察】 OVXラットにより心機能の低下が認められ、この変化はエストロゲン投与により回復したことよりエストロゲンによる心保護作用をin vitroな系で確認した。そして虚血再灌流時のエストロゲンの心筋保護効果にはNOの関与していることが明らかにされた。次年度以降はこれらエストロゲンの心筋保護作用の機序について細胞内Ca変化、脂質代謝といった面からさらに検討を行う予定である。
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