研究概要 |
洞結節細胞の活動電位形成には様々なイオンチャネルが関与する。現在までの我々の研究ではペースメーカー電位の形成に2種類のCa電流,過分極誘発電流および内向き背景電流が重要な役割を果たしていることが確認された。一方,洞結節細胞の再分極相を形成する電流系に関する報告は少なく,そのイオン機序も十分に検討されていない。本年度の研究では単一洞結節細胞にパッチクランプ法を応用して,whole-cell電流を記録した状態で再分極相に重要と考えられるK電流を解析した。その結果,洞結節細胞には4-aminopyridine(4-AP)に感受性のある一過性K電流(Ito)が存在することが確認された。洞結節細胞のItoは心房筋と比較して電流密度は小さいが,不活性化からの回復時間が著しく速く,チャネルの性質も心房筋とは異なる可能性が考えられた。洞結節細胞活動電位におけるItoの役割を低濃度の4-APを用いて検討すると,活動電位幅は4-APにより約20%延長した。これらの結果,Itoは洞結節細胞の再分極相において重要な役割を果たしていることが確認された。また,洞結節細胞と心房筋細胞のItoに関して,RT-PCR法でチャネル蛋白の構造を検討した結果,洞結節細胞のItoはKチャネルクローンの中でKv4.2に類似した性質である可能性が示唆された。従って,今後はこれらの機能に関して検討する予定である。
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