研究概要 |
洞結節細胞活動電位の再分極相を担うイオン電流には,時間依存性の外向きK電流と時間非依存性のK電流が存在する。時間依存性K電流の中で,一過性外向きK電流(Ito)は様々な動物種で活動電位早期の再分極相を形成することが知られているが,洞結節細胞のItoに関する性質や電気生理学的な役割に関する詳細な報告は認められない。 そこで,本年度はウサギ洞結節細胞の再分極相を形成する4-aminopyridine(4-AP)感受性のItoについて電気生理学的性質を検討した。洞結節細胞のItoは膜電位が約-30mVで活性化され,外向き整流性の特徴を示した。Itoは4-APにより濃度依存性に抑制され,IC50値は0.28mMであった。Itoの電流密度は洞結節細胞が6.3±0.5pA/pFに対して心房筋が12.3±1.2pA/pFと,心房筋のItoが約2倍の電流密度であった。また,不活性化からの回復過程の時定数は、洞結節は44.7±9.0msに対して,心房筋では2つの成分からなり,1.39±0.32sと6.70±0.1sであった。以上のことから,洞結節細胞と心房筋Itoでは電流密度のみならず,その性質が大きく異なっており,Itoを構成しているチャンネルの構造も両部位では異なる可能性が考えられた。
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