研究概要 |
【研究概要】高頻度ペーシングによる心不全モデルを用いて,心機能障害から心不全に至る過程での心筋β受容体細胞内伝達系の機能を,まず無麻酔覚醒状態にて生理学的手法を用いて評価し,さらにこの生理学的変化が実際どの生化学的変化と最もよく相関するかを検討した. 【平成12年度】雑種犬9頭を麻酔し,無菌的に大動脈圧および左室圧測定用カテーテルと右室ペーシング用のワイヤーを植込み,右室高頻度刺激(240bpm)を行わない犬(2頭),および刺激1日目(3頭),1週目(2頭),4-7週目(2頭)の犬のisoproterenolに対する心筋反応性(左室dP/dt)を無麻酔覚醒状態にて測定した.その結果,ペーシング1日目よりisoproterenolに対する左室dP/dtの反応性は進行性に低下した(+4671±242→+1872±149→+1719±137→+1316±89mmHg/sec). 【平成13年度】ペーシング1日目より進行性に高親和性β受容体数(45±4→26±6→18±3→9±3fmol/mg),およびアデニル酸シクラーゼ活性(104±4→74±10→69±5→49±3pmol cAMP/mg/min)は低下した.リアノジン受容体はペーシング1日目より減少したが進行性ではなかった(1013±25→808±42→826±53→782±61fmol/mg).総β受容体数およびGs蛋白は変化しなかった.心機能障害時,isoproterenolに対する心筋反応性の低下が心筋β受容体細胞内情報伝達経路のどの因子と最も相関するかを調べた結果,高親和性β受容体数と最もよく相関していた(r=0.72,P<0.01).
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